Adele|アーティスト歴史 完全版 — グラミー16回受賞 / Album of the Year 2回 / 『25』初週338万枚 / ミュンヘン73万人 全記録
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▲ Recording Academy 公式「GRAMMY Rewind」より、2012年 第54回グラミー賞で「Rolling in the Deep」が Record of the Year を受賞した際のアデルの受賞スピーチ。この夜、彼女はノミネートされた6部門すべてを制した。
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本名: Adele Laurie Blue Adkins(アデル・ローリー・ブルー・アドキンス)/ 1988年5月5日、英ロンドン・トッテナム生まれ
グラミー賞 通算受賞: 16回 / ノミネート: 25回
Album of the Year 受賞: 2回(『21』2012年/『25』2017年)
Record of the Year 受賞: 2回(Rolling in the Deep/Hello)
Song of the Year 受賞: 2回(Rolling in the Deep/Hello)— 同一式典で主要3部門を制したのは2012年と2017年の2度。この記録を持つのはアデルのみ
Best New Artist 受賞: 2009年(第51回)
Best Pop Solo Performance 受賞: 4回 — 同部門の最多受賞記録
アカデミー賞: 1回(2013年 第85回・主題歌賞「Skyfall」)/ ゴールデングローブ賞: 1回 / プライムタイム・エミー賞: 1回(2022年)
ブリット・アワード: 12回受賞
『21』純アルバム売上: 3,000万枚超 — 21世紀に発表されたスタジオアルバムとして最大級
『25』米国初週売上: 338万枚 — Nielsen が実売集計を開始した1991年以降の最高記録
総アルバム換算ユニット: 全世界1億2,000万超(2025年9月時点)
スタジオアルバム: 4作(19/21/25/30)— 18年のキャリアでわずか4作
はじめに — 4枚で18年を戦った歌手
アデルのキャリアで最初に目を引く数字は、受賞歴でも売上でもない。「スタジオアルバム4作」である。2008年のデビューから2026年の現在まで18年、彼女が世に出したフルアルバムは『19』『21』『25』『30』の4枚だけだ。同時代のポップスターの多くが2〜3年に1枚のペースで作品を出し、その間もシングル、フィーチャリング、リミックスで露出を絶やさないことを考えると、この寡作ぶりは異様に映る。
にもかかわらず、その4枚は毎回、市場の記録を書き換えてきた。『21』は21世紀に出たアルバムとして最大級の実売を記録し、『25』は米国の週間実売記録を四半世紀ぶりに更新した。グラミー賞では通算16回受賞、主要3部門の同時制覇を2度成し遂げた唯一のアーティストになった。
本稿では、この「出さないこと」と「桁違いに売れること」がどう結びついているのかを、13章に分けて年代順に追う。GAJ(ジ・アソシエーション・ジャパン)としての関心は、彼女の歌唱力そのものよりも、声とピアノという最小構成の音楽が、なぜ世界最大規模の産業的成功に接続しえたのかという構造にある。
第1章 1988–2006 トッテナムからBRIT Schoolへ
アデル・ローリー・ブルー・アドキンスは1988年5月5日、ロンドン北部トッテナムに生まれた。母は当時18歳。父は幼少期に家を出ており、母子家庭で育っている。
転機は、公費で運営される芸術系の中等教育機関 BRIT School への進学だった。彼女は2006年にここを卒業している。同校はエイミー・ワインハウス、ジェシー・J、レオナ・ルイスらを輩出しており、英国のポップ音楽産業が「才能を偶然に任せず、教育制度として供給する」設計を持っていたことを示す施設である。日本の音楽業界がしばしば議論する「人材育成の入り口をどこに置くか」という問いに対する、ひとつの回答がここにある。
第2章 2006–2008 XL Recordings と『19』
卒業後、アデルはインディペンデント・レーベル XL Recordings と契約する。メジャー3社ではなくインディーを選んだことは、その後の彼女の作品運営に一貫して影響した。契約先が小さいほど、制作の主導権はアーティスト側に残りやすい。
デビューアルバム『19』は2008年に発表された。タイトルは、収録曲の大半を書いた年齢に由来する。以降、彼女はすべてのアルバムを「制作時の年齢」で命名していく。「Chasing Pavements」「Make You Feel My Love」が英国トップ5に入り、彼女は一夜のヒットではなく、継続的に聴かれる歌手として市場に受け入れられた。
▲「Chasing Pavements」公式ミュージックビデオ(2008年/アルバム『19』収録)
第3章 2009 Best New Artist — グラミー初受賞
2009年の第51回グラミー賞で、アデルは Best New Artist を受賞した。同時に「Chasing Pavements」で Best Female Pop Vocal Performance も獲得している。20歳での2冠は、米国市場が英国のインディー・レーベル所属の新人をどう評価したかを示す出来事だった。
Best New Artist は、その後のキャリアが続かない受賞者も多い部門として知られる。アデルはここから、この部門の受賞者として最大級の成功を積み上げていく数少ない例になった。
第4章 2010–2011 『21』という分水嶺
2011年に発表された2作目『21』は、彼女のキャリアだけでなく、2010年代のポップ市場そのものの前提を変えた。純アルバム売上は3,000万枚を超え、21世紀に発表されたスタジオアルバムとして最大級の数字を記録している。
この時期は、音楽産業がCD市場の崩壊とダウンロード販売の頭打ち、ストリーミングの本格化のあいだで揺れていた局面である。「アルバムはもう売れない」という前提が業界内で共有されつつあったなかで、『21』はその前提を単独で覆した。制作陣にはポール・エプワース、リック・ルービン、ダン・ウィルソン、フレイザー・T・スミスらが参加している。
第5章 2011「Rolling in the Deep」と「Someone Like You」
『21』を牽引した2曲は、まったく対照的な設計を持っている。「Rolling in the Deep」はポール・エプワースとの共作で、足踏みのようなリズムとゴスペル的なコーラスを積み上げる構造。サム・ブラウン監督による公式ミュージックビデオは、2022年3月に20億再生を突破した。
▲「Rolling in the Deep」公式ミュージックビデオ(2010年11月公開)。2012年グラミー賞で Record of the Year と Song of the Year を受賞
対する「Someone Like You」はダン・ウィルソンとの共作で、ピアノと声だけで最後まで押し切る。編曲上の仕掛けをほぼ排したこの構成は、当時のヒットチャートでは異例だった。英国で彼女初の1位を獲得し、5週にわたり首位を維持。同国およびアイルランド、イタリアで年間最多販売シングルとなった。ジェイク・ネイヴァ監督によるモノクロのミュージックビデオは2011年9月29日に公開されている。
▲「Someone Like You」公式ミュージックビデオ(2011年)。パリで撮影されたモノクロ映像
第6章 2012 第54回グラミー賞 — 6部門完全制覇
2012年2月の第54回グラミー賞で、アデルはノミネートされた6部門すべてを受賞した。『21』が Album of the Year と Best Pop Vocal Album、「Rolling in the Deep」が Record of the Year と Song of the Year、「Someone Like You」が Best Pop Solo Performance を獲得している。一夜で6冠を達成した女性アーティストは、当時の史上2人目だった。
この夜が特筆されるのは、直前に声帯の手術を受けており、復帰後初の本格的なパフォーマンスの場でもあったからである。歌手としてのキャリアの継続そのものが不透明だった時期を経ての完全制覇だった。
第7章 2012–2013「Skyfall」とアカデミー賞
2012年10月、007シリーズ第23作の主題歌「Skyfall」が発表された。作詞作曲はアデルとポール・エプワース。翌2013年の第85回アカデミー賞で主題歌賞を受賞し、ジェームズ・ボンドの主題歌としては史上初のオスカー獲得となった。同年のゴールデングローブ賞主題歌賞、グラミー賞 Best Song Written for Visual Media も受賞している。
シンクロナイゼーション(映像への楽曲提供)が、アーティストのキャリアにとってどれほど大きな増幅装置になりうるか。「Skyfall」はその教科書的な事例である。既存曲のタイアップではなく、映画のために書き下ろした主題歌が、映画本編とは独立した資産として機能し続けている。
▲「Skyfall」公式リリックビデオ(2012年10月18日公開)
第8章 2013–2015 沈黙の3年と「Hello」
『21』の成功から次作までに4年、「Skyfall」からも3年の空白があった。この間、アデルはほとんど公の場に出ていない。ストリーミング時代の常識では、この長さの沈黙はキャリアにとって致命的とされる。
2015年10月、事前告知をほぼ行わないまま「Hello」が公開された。グザヴィエ・ドラン監督によるミュージックビデオはモントリオール郊外で撮影され、YouTube 史上最速で10億再生に到達した。またこの曲は、米国で週間100万ダウンロードを突破した史上初の楽曲となった。
▲「Hello」公式ミュージックビデオ(2015年/グザヴィエ・ドラン監督)
第9章 2015–2016 『25』と初週338万枚
2015年11月に発表された『25』は、米国初週で338万枚を売り上げた。Nielsen が実売集計を開始した1991年以降の最高記録であり、それまでの記録だった *NSYNC『No Strings Attached』の242万枚(2000年)を大幅に更新した。週間300万枚を超えた初のアルバムでもある。
この記録には前提がある。アデル側は『25』を発売当初、主要ストリーミングサービスに提供しなかった。聴くには買うしかない、という状態を意図的に作ったうえでの338万枚である。全世界では2,300万枚超を売り上げている。ストリーミング全盛期に「販売」で勝負した、おそらく最後の大規模な事例だった。
第10章 2017 第59回グラミー賞 — 2度目の三冠と、ビヨンセへの言葉
2017年の第59回グラミー賞で、『25』が Album of the Year と Best Pop Vocal Album を、「Hello」が Record of the Year、Song of the Year、Best Pop Solo Performance を受賞した。同一式典で主要3部門を制するのを2度経験したアーティストは、現在に至るまでアデルだけである。
この夜が記憶されているのは、受賞の内容よりもスピーチのほうである。Album of the Year を受け取ったアデルは、同部門にノミネートされていたビヨンセの『Lemonade』こそが受賞に値すると壇上で述べた。授賞式という制度に対して受賞者自身が異議を差し込んだ場面として、グラミー史に残っている。
第11章 2017–2021 離婚、そして『30』
『25』以降、再び6年の空白が置かれた。この間にアデルは離婚を経験している。2021年10月に先行シングル「Easy On Me」、11月に4作目『30』が発表された。離婚と、息子に向けた説明という主題が、アルバム全体を貫いている。
『30』は2021年の世界年間最多販売アルバムとなり、同年だけで554万枚を売り上げた。CD市場が事実上縮小しきった時期の数字として、突出している。
▲「Easy On Me」公式リリックビデオ(2021年10月15日公開)。2023年グラミー賞 Best Pop Solo Performance 受賞曲
第12章 2022–2024 ラスベガスとミュンヘン
2022年11月18日、ラスベガスのシーザーズパレス内 The Colosseum で「Weekends with Adele」が始まった。2024年11月23日の千秋楽まで、全100公演。ワールドツアーではなく1会場に観客を呼び込む residency 型を選んだことは、移動コストと演出品質のトレードオフに対するひとつの解答だった。
2024年8月2日から31日にかけては、ミュンヘンで屋外10公演「Adele in Munich」を開催した。この公演のために専用の仮設会場が建設され、1公演あたり7万3,000人以上を収容。10公演で73万人以上を動員し、ラスベガス以外で行われた residency として最大の動員記録となった。会場には全長220メートル、面積4,159.7平方メートルの連続LEDウォールが設置されている。
「アーティストが移動するのではなく、観客を1か所に集める」という発想は、日本の興行にとっても示唆がある。全国を回る前提を外したとき、演出と会場設計にどこまで投資できるのかを、ミュンヘンの事例は具体的な数字で示している。
第13章 2023–2026 16回目のグラミーと、その先
2023年の第65回グラミー賞で、アデルは「Easy On Me」により Best Pop Solo Performance を受賞し、通算16勝目を記録した。同部門の受賞は4回目で、これは同部門の最多記録である。一方、『30』がノミネートされていた Album of the Year は、ハリー・スタイルズの『Harry's House』が受賞している。主要部門での連勝は、ここで止まった。
2022年には、CBSの特番『Adele One Night Only』でプライムタイム・エミー賞(Outstanding Variety Special (Pre-Recorded))を受賞した。グラミー、オスカー、エミーを揃えたことで、EGOT(4賞制覇)まで残すはトニー賞のみとなっている。
ミュンヘン公演とラスベガス residency の終了以降、アデルは活動の頻度を大きく落としている。過去2回の空白がいずれも4〜6年だったことを踏まえれば、この静けさ自体は彼女のキャリアにおいて例外ではない。
グラミー賞 主要部門 受賞歴
2009年 第51回 — Best New Artist / Best Female Pop Vocal Performance「Chasing Pavements」
2012年 第54回 — Album of the Year『21』/ Record of the Year「Rolling in the Deep」/ Song of the Year「Rolling in the Deep」/ Best Pop Solo Performance「Someone Like You」/ Best Pop Vocal Album ほか、ノミネート6部門を完全制覇
2013年 第55回 — Best Pop Solo Performance「Set Fire to the Rain (Live)」
2014年 第56回 — Best Song Written for Visual Media「Skyfall」
2017年 第59回 — Album of the Year『25』/ Record of the Year「Hello」/ Song of the Year「Hello」/ Best Pop Solo Performance「Hello」/ Best Pop Vocal Album
2023年 第65回 — Best Pop Solo Performance「Easy On Me」(通算16勝目)
Big 4(Album of the Year / Record of the Year / Song of the Year / Best New Artist)の内訳は、Album of the Year 2回、Record of the Year 2回、Song of the Year 2回、Best New Artist 1回の計7回。主要4部門すべてを制した数少ないアーティストのひとりである。
スタジオアルバム 全4作
『19』(2008年)— デビュー作。「Chasing Pavements」「Make You Feel My Love」収録。2009年 Best New Artist の礎
『21』(2011年)— 純アルバム売上3,000万枚超。2012年 Album of the Year。「Rolling in the Deep」「Someone Like You」「Set Fire to the Rain」収録
『25』(2015年)— 米国初週338万枚(Nielsen 集計史上最高)。全世界2,300万枚超。2017年 Album of the Year。「Hello」収録
『30』(2021年)— 2021年の世界年間最多販売アルバム(554万枚)。「Easy On Me」収録
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出典・本記事について
本記事は Recording Academy 公式(grammy.com)を一次ソースとし、Billboard、The Hollywood Reporter、Britannica、IQ Magazine 等の報道を参照して構成しています。受賞歴・売上・動員数は各発表時点の数値です。冒頭映像は Recording Academy 公式チャンネルの「GRAMMY Rewind」シリーズ、本文中の映像は各アーティストの公式チャンネルによるものです。
GAJ(ジ・アソシエーション・ジャパン)は、株式会社ブラッシュミュージックが運営するグラミー賞・国際音楽賞に関する情報発信プロジェクトです。本記事は Recording Academy および関係各社と提携・提携関係にあるものではありません。




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