音楽IPの収益化はどこから手をつけるか|権利の種類別に収益源を整理する
- 8月17日
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「音楽IPを収益化する」という言い方が広く使われるようになりました。ただ、この言葉のまま考え始めると、たいてい手が止まります。音楽IPは単一の権利ではなく、性質の違う複数の権利の束だからです。どの権利から手をつけるのかを決めない限り、具体的な行動になりません。ここでは株式会社BRUSH MUSICの視点から、権利の種類ごとに収益源を分解して整理します。

音楽IPは一つの権利ではない
1曲のまわりには、少なくとも次の権利が並んでいます。
著作権:作詞・作曲によって生じる権利。権利者は作詞者・作曲者と音楽出版社です。
著作隣接権(原盤権):録音された音源にかかる権利。原則として制作費を負担した側が持ちます。
実演家の権利:演奏・歌唱を行った実演家に生じる権利です。
商標・肖像などの周辺権利:アーティスト名、ロゴ、ビジュアル。楽曲そのものとは別に管理が必要です。
収益化の相談が具体化しないときは、たいていこの区別が曖昧なままです。「うちの曲のIP」と言ったとき、自社が実際に握っているのがどれなのかを先に確認してください。持っていない権利は、当然ながら収益化できません。
権利ごとに収益の出方が違う
権利の種類が違えば、お金の入り方も入る時期も違います。
著作権から:放送・演奏・カラオケ・配信などの使用料。多くは著作権管理事業者を経由し、定期的な分配として届きます。金額は読みにくい一方、いったん登録されれば継続的に発生します。
原盤権から:配信事業者やレコード会社からの精算。契約にもとづく直接の支払いで、管理事業者は関与しません。
同期使用(シンクロ)から:映像作品や広告に楽曲を使う許諾。1件ごとの交渉で金額が決まるため、単価は大きくなりやすい反面、案件が入るかどうかは読めません。
二次利用・派生から:リミックス、カバー、ゲームやアプリでの利用など。許諾の設計次第で広がります。
重要なのは、これらが同じ財布から出てくるわけではないという点です。継続的に薄く入るもの(著作権使用料)と、単発で厚く入るもの(同期使用)は、事業計画上の扱いを分ける必要があります。
海外展開で最初に詰まるところ
海外での収益化は、配信ストアに楽曲が並んだ時点では始まっていません。実際に詰まるのは、その手前と後ろです。
手前で詰まるのは権利の所在です。海外の制作会社やブランドが楽曲を使いたいと考えたとき、誰に許諾を求めればよいかがわからなければ、そこで検討は止まります。連絡先と権利の持ち分が外から確認できる状態になっているかどうかは、想像以上に大きな差になります。
後ろで詰まるのは回収です。著作権使用料は現地の管理団体との相互管理契約を経由して戻ってくるため、国内よりさらに時間がかかります。原盤側の海外分は契約次第です。回収経路が設計されていないまま露出だけ増やすと、使われているのに戻ってこない状態になります。
着手の順序
網羅的にやろうとすると動けなくなるので、順序を固定することをおすすめします。
権利の棚卸し。楽曲ごとに、著作権・原盤権・実演家の権利を誰がどの割合で持っているかを一覧にする。
書面の確認。その持ち分が契約書として存在しているか。口約束のままの箇所を洗い出す。
登録の整備。管理事業者への作品届、配信のメタデータ、クレジット表記を実態と一致させる。
問い合わせ経路の整備。第三者が許諾を取りたいときにたどり着ける窓口を、外から見える場所に置く。
収益源の優先付け。継続収益と単発収益のどちらを先に伸ばすかを決め、そこに絞る。
1と2を飛ばして4以降に進むと、案件が来てから権利関係を整理することになり、機会そのものを失います。順序には理由があります。
AI時代に変わること、変わらないこと
AIによって変わるのは、主に検出と処理の速度です。楽曲の利用状況を自動で照合し、権利処理を効率化する取り組みは進んでいます。カタログの規模が大きいほど、この恩恵は大きくなります。
一方で、AIが関わって制作された楽曲の権利の帰属や、学習データの取り扱いについては、国内外で議論が続いており、確定した扱いがあるわけではありません。ここを楽観的に見積もって設計するのは危険です。
そして変わらないのは、権利の所在が書面で確定していなければ収益化できない、という点です。技術がどれだけ進んでも、誰が権利を持っているかが不明な楽曲は取引の対象になりません。地味な整備が、そのまま収益化の土台になります。
なお本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。株式会社BRUSH MUSICは法律事務所ではなく、具体的な契約や権利処理については弁護士等の専門家にご相談ください。
音楽IPの棚卸しや権利まわりの体制構築のご相談は BUSINESS SUPPORT から、楽曲・アーティストの展開については MUSIC AGENCY から承ります。



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