第60回グラミー賞(2018):Bruno Mars 6ノミネート全制覇 — Kendrick『DAMN.』5部門と #GrammysSoMale バックラッシュ、15年振り MSG 開催
- 8月16日
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2018年1月28日、Madison Square Garden(MSG)での第60回グラミー賞 — 2003年の第45回以来、実に15年振りのニューヨーク開催となった節目の式典。Bruno Mars『24K Magic』が Album・Record・Song of the Year を含む6ノミネートを全て制覇する完全試合を達成、Kendrick Lamar『DAMN.』も5部門を獲得した。しかし女性受賞者の少なさを巡って #GrammysSoMale ハッシュタグが爆発、Recording Academy 会長 Neil Portnow の「女性はもっとステップアップを」発言が業界全体の怒りに火をつけ、最終的には彼の辞任に繋がる転換点となった。
出来事の背景
2017年は #MeToo 運動が爆発した年。映画プロデューサー Harvey Weinstein のセクハラ告発を皮切りに、エンタメ業界全体で女性の権利と発言力が問われる中、グラミー賞は「ジェンダー平等の試金石」として世界中の注目を浴びていた。
ノミネーション段階で、主要4部門(AOTY/ROTY/SOTY/BNA)の合計20席のうち女性ソロ・アーティストはわずか1人(Lorde『Melodrama』が AOTY のみ)。SZA は5ノミネートながら全敗、Cardi B のヒットも主要部門は届かなかった。
式典の場所も注目された。Recording Academy はニューヨーク市場のロビー活動を受け、LA 開催の慣例を破って MSG での開催を決定。これは2018年シーズンの最大の儀式上の変化となった。
受賞の瞬間 / 出来事の詳細
Bruno Mars は6ノミネート全て獲得 — Album of the Year、Record of the Year、Song of the Year、Best R&B Album、Best R&B Performance、Best R&B Song。これは Christopher Cross(1981年)、Adele(2012年・2017年)、Billie Eilish(2020年)に並ぶ「全カテゴリー全勝」の歴史的快挙だった。
Kendrick Lamar『DAMN.』は5部門を受賞 — Best Rap Album、Best Rap Performance「HUMBLE.」、Best Rap Song「HUMBLE.」、Best Rap/Sung Performance「LOYALTY.」、Best Music Video「HUMBLE.」。オープニング・パフォーマンスは U2 と Dave Chappelle が登場する社会派の構成で、アメリカ社会の構造的人種差別を強烈に告発した。
Lorde は AOTY ノミネートながら、男性ノミネート4組と異なりソロ・パフォーマンス枠を提供されなかった(Tom Petty 追悼の集団パフォーマンスのみ)ことが批判の中心となった。式典後の記者会見で Neil Portnow が「女性アーティストは『step up』する必要がある」と発言、これがソーシャル・メディアで瞬時に炎上、最終的に2019年の彼の退任に繋がった。
文化的・産業的意義
Bruno Mars の AOTY 受賞は「Best Pop Album でなく Best R&B Album で受賞しながら最高賞」という特異な構図 — 黒人音楽伝統への深いリスペクトを示しながら最大のポップ・ヒットを生み出すという彼独自のポジションを Academy が公式に認めた瞬間だった。
#GrammysSoMale 論争は、Recording Academy の構造改革を促し、2019年以降は主要部門ノミネート数を5→8に拡大、投票委員会の多様化施策、女性プロデューサー/エンジニア育成プログラムなど一連の制度改革に繋がった。
GAJ 視点 / 日本の音楽業界への示唆
日本の音楽産業はジェンダー平等で世界平均から大きく遅れており、メジャー・レーベルの A&R、プロデューサー、エンジニア職に占める女性比率は10%未満と推定される。グラミー賞のこの危機を契機とした構造改革は、日本のレコ大、JASRAC、日本レコード協会などにも参考とすべき事例である。GAJ は日本における女性クリエイターの可視化と支援を中核ミッションの一つとする必要がある。
発行:株式会社BRUSH MUSIC / GAJ ヒストリー


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