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HAKASE-SUN ニューアルバム「Let It Shine! Let It Shine!! Let It Shine!!!」インタビュー!



今年、デビュー30周年、そしてソロとしても20周年を迎えるレゲエキーボーディスト・HAKASE-SUN。5年ぶりとなるニューアルバム「Let It Shine! Let It Shine!! Let It Shine!!!」は全15曲の大作となっており必聴の一枚です。

また一つ名盤を作り上げた彼にアルバムについて伺いました。


-まず、最初にアルバムタイトル「Let It Shine! Let It Shine!! Let It Shine!!!」にはどのよう思いが込められているのでしょうか?


自分が自分らしく生きるためには、他人や社会、国に頼るのも大事だけどその前にまず自分自身が輝くことが大事ではないかと。コロナや社会状況、溢れる情報に翻弄されがちな今の人たちにとって、何かしらの形で光を放つことが大事だと考えます。

そういった意味を込めた、今回はメッセージ・アルバム的な意味合いを含むものにしたいと考えていました。それってあくまで内面的なことだと思うんですけど、人に輝きを与えることって、世界平和に一番シンプルに貢献する方法だと思うんですよね。


-また、アルバムは全15曲と大作となっていますが制作はスムーズに進行しましたか?


やりたい方向性はいつも頭の中に溢れかえってるんですよ。それをどの方向に的を絞るか。それをまとめあげてアルバムのコンセプトづけをするのに毎回、一番苦労します。具体的には昨年の4月ごろ、コロナ時代と同時くらいに制作をスタートしましたが、先の見えない日々だったので、時間は潤沢にあるものの、何をこの時代にどういう形で表現して行ったらいいのか?今までのファンの期待を裏切らずに、なおかつHAKASE-SUNの名前で、この時代に生きる人間としての新しい「表現方法」を探したいと思っていたので。さすがに5年ぶりのアルバムで前の作品と同じクオリティだと、何をしていたんだということになりますからね(笑)

前作よりハードルは下げられない、そういう緊張感は常に持っています。CDの収録時間めいっぱいに曲を入れようと思ってましたので。次回の作品を今度いつ作れるのかわかりませんからね。曲数が多いとクオリティを保つのが至難の技ですね。それプラス、作曲から録音、スタジオの手配から譜面書き、経費の計算まで全部一人でやっていますから。頭がしっちゃかめっちゃかになりそうな時も多々ありましたが、そこは今までの経験値で乗り越えられました。自分の出来るペースで、出来る範囲のことしかやらないようにしていますから。そういう意味では前半ゆとり制作、後半締め切りが定まってからの猛ダッシュといったところです。


-全てをご自身でなされ、じっくりと時間をかけ作られてた作品なんですね。続いて楽曲についてなのですが2曲目の「bFGF」はタイトルも含め、どういった楽曲でしょうか?


自分の曲のタイトルって、常にキャッチーなフレーズを探していて、それは主に閃き、つまり言葉が降りてくるのを待ってるんですが、なかなかそうも行かないことがあって。この曲に関しては仮タイトルが「M2」、つまりアルバムの2曲目にするのは決まってたんですが最後の最後、マスタリングの前日になっても決まらなくて・・・。

正直、もうなんでもいいやと思って、こういう意味不明なタイトルが一個混じってるのも謎めいてて面白いんじゃない?的な。

コードのBフラットとGフラットを多用しているというのもありますし、リズムをUKのラヴァーズ・ロック風に仕立てたので、ラヴァーズ=BF(ボーイフレンド)、GF(ガールフレンド)みたいな意味にも取れるし。単なる暗号めいた感じもありつつ。割とそんな感じで、ダブルミーニング的な発想で名付けたタイトルです。なので、こうやって突っ込んでもらえると非常に嬉しいです(笑)。


-なるほど、背景を伺うとまた聴き方も変わってきますね。そして、先行配信中の13曲目の「Ambitious Love」はARIWAさんとのコラボレーション楽曲となっていますがこの楽曲の経緯を教えていただきたいです。


ARIWAちゃんは今20歳過ぎなんですけど、実は彼女がまだお腹の中にいるときにママ(=元ゼルダのボーカリストSAYOKOさん)のソロアルバムの制作を手伝ってたんですよ。なので、まだ胎内にいる頃から彼女と何か交信してたんじゃないかと、そういう思いがあって。で、その後ずいぶん経ってから、僕が今メンバーで参加しているKODAMA&The Dub Station Bandの新メンバーとして彼女が参加することになったんですよ。そんなわけでここ最近は一緒にステージに立ったり、割と近い場所にいた子なので、とてもスムースな形でオファー出来ました。この年頃の女の子って、ほんと何ヶ月かサイクルでどんどん変わっていくじゃないですか。ともかく声質がずば抜けて良くてほとばしるような勢いがある人なので、ビッグなイメージの曲、そしてずばり、誰が聴いても「名曲!」と感じられる作品にしたいなと。

歌詞については当初、彼女に書いてもらう予定だったのですが訳あって僕が書くことになりました。1990年代、フィッシュマンズのメンバーだった時に2曲ほど詞を書いた経験はあって、歌詞を書くって自分的にはこっ恥ずかしいなあ、っていう気持ちがあって、それ以来もう一生やらないぞ!と固く心に誓っていたのですが(笑)、もう一回チャレンジしてみようかな?という意欲が出てきまして。腹をくくってよし自分で書くぞ!と決意した瞬間、キモになりそうなワードがふっと降りてきたので、それをきっかけにして、REC中に泊まったホテルで夜、缶詰め状態の作家さんのように集中して一気に書き上げました。


-そうでしたか。久しぶりに書かれた歌詞にも注目してほしいとても美しい一曲です。

続く14曲目には今年惜しくもお亡くなりになった伝説のプロデューサー・フィルスペクターの名曲「Spanish Harlem」をカバーされていますね。


元々、古いリズム&ブルースは大好きだったんですよ。普段聴くのは黒人音楽寄りなもので。「Stand By Me」で超有名な Ben.E Kingの歌で、ドリーミーで素敵な曲ですよね。実はフィル・スペクター作曲というのも知らなかった。イントロの印象的な、オリジナルだと木琴で弾いてるのかな?そんなフレーズがありまして。これをスティール・パンの音色でやったらハマるんじゃないか、と。そういう単純な動機でカバーしました。決してレゲエ寄りではなく、ここはあえてオーケストラチックなフレーバーも交えて、自分ならではの創意を込めたアレンジで、と言ったところです。イメージ的には12月、年も押し迫って、気持ちがなんだか華やかになる時期の心がほわっとあったかくなるようなムードを出せればなあ、と思って作りました。

イントロと間奏のサックスソロは星野源さんのバンドで活躍している武嶋聡くんが、最高のテイクで花を添えてくれました。


-熱狂的なファンが多いフィルスペクターマニアの方にも是非お勧めしたいナンバーです。次になるのですが全体を通してどの楽曲も多彩な音色で彩られていますが音色を決める際のこだわりやポイントはありますか?


キーボードの音色に関しては芯があって抜ける音というのが基本の方向性です。最新のモデルを使うことは少なくて、1980〜90年代の機材が使用頻度高いですね。この時代はバブル期の前後ということもあって中身もケチらずに良い部品が使われていて、電源もしっかりトランスを通ってたりするので、音に重みがあるんですよね。

あと、弾いた時のアタック感が強いのも大きな理由です。リズム・ミュージックには欠かせない要素だと思います。

オルガンのメロディの音は、本物のHAMMONDオルガンをスピーカーを通して鳴らした音をシミュレートしているのですが、ここはまだまだ模索中と言ったところです。今回はかなりリアルに近づけたと思います。マイク録りの空気感をいかにしてライン録音で出すか。ここが腕の見せ所ですね。


-また、リズムも趣向がこらされていますが、リズムやグルーブに対する考え方を教えていただきたいです。


リズムに関してはこだわりだらけで、今日ここで伝え切れないほどたくさんありますが(笑)、極意は一言で言うと「タイト」。自分にとって気持ちのいいリズムって、他の人たちが聴いても絶対的に気持ちいいはずだ!という、盲信に近い確信がありまして。その気持ちだけが頼りですね。MPCというリズムマシンでドラム・パターンを組むんですが、スタジオの隣の部屋で15分聴いてみて、ずっと聴けそうなリズムだったらオッケー、みたいな感じです。そこから細かい微調整。ドラムに関してはマシンを使ってますが、それ以外の鍵盤、ベース、味付けの音なんかも含めて残りは全て自分の手弾きです。だから、タイミングが命、気合一発で。

あとはリズム1個1個の音の粒が太いこと。お互いに混ざったときに邪魔していないこと。ざっと言うとそんなところです。

ちなみにトラック全体に関してはDAWを使っていないので編集・コピペ一切なしでやってます。今時そんなやり方は主流じゃないのも重々わかっていますが、あえて伝統芸能的に続けて行こうかと。


-この記事を読んだ皆さんにぜひ注目していただきたいポイントの一つですね。リスナーとしてHAKASE-SUNも気になります。普段はどのような音楽を聞かれているのでしょうか?ご自身の音楽と異なるジャンルで良く聴かれる音楽はありますか?


基本、古い音楽が好きで、1990年までの音楽がほとんどですね。

黒人音楽中心のリスニングが多いですが、どちらかと言うと高尚な音楽よりも単純明快な音、大衆音楽寄りの音が好みです。

先ほども話に出たように、古めのR&B、ソウル、ハードバップジャズ、ドゥーワップなんかのグループとか。あとアフリカ音楽全般。ここ最近はブラジル音楽のサウダージ的な哀愁の世界がようやくわかるようになってきました。


-仕事の向かい方についてお聞かせください。これまで多くの作品を手がけられていますが創作活動を豊かにするための習慣や日課などはありますか?


ここ最近はなかなか旅が出来ない状況ですが、移動すること=旅ってやっぱりイメージ醸成に大事なことだなあ、と思います。飛行機に乗ってる時でも自転車漕いでる時でもいいんですが、動いているときにアイデアが湧くことがとても多いですね。

あとは流し場でお皿を洗っている時とかにも。そう言う一瞬のひらめき、かけらををうまく拾って、メモって残しておいたりすると後々、育てて行けるので。

ヒラメキの種を純度をキープしつついかに育てるか、作品に昇華させるかという。毎回うまくいくとは限りませんが、雑念が入りにくいシチュエーション、ライフスタイルを意識しています。一人の時間がやはり大事ですよね。あとはそうですね、日々を生きるスタイルとして常に心がけるのは自分の限界を知ること、かな。若い時はいろいろ何でも出来そうな気がしましたが、肉体的にも脳細胞的にも多少歳を取って衰えてきたかな、というのもありますし。限界を知れば無理なものを作って苦労することも少なくなりますし、人におもねることもなく無駄のない時間の使い方が出来る。限りある資源を大切に(笑)の心でまだまだ創作を続けていきたいと思います。


-ありがとうございます。全てのクリエイターにとってものすごく参考になる意見です。

最後になりますが今年はアニバーサリーイヤーでもあり、アルバムもリリースされ、今後の展望をお聞かせいただきたいです。


まず来年あたりは全国をソロライブツアーしたいな、と。聴いた人たちの反応を知ることは励みになるので。アルバムの制作が終わったばかりでホッとするのも束の間、すでに「締め切りの決まっていない制作期間」に突入したな、という感もあります。気持ちに余裕があるこの時間を大事にして、次作の構想を練っています。2年以内には次のアルバムを発表したいな、という目標で。自分ならではのレゲエをさらに深化させたいと考えています。




・プロフィール 今年キャリア30周年、ソロ・デビュー20周年を迎えるレゲエ・キーボーディスト。 大阪府出身。上京後、FISHMANSに1990年加入、翌91年にメジャーデビューの後5年間活動。95年に脱退後、Little Tempoに加入。2001年よりHAKASE-SUN名義でソロ活動スタート。 10枚以上のアルバムをリリース。インストゥルメンタルのオルガンレゲエ・サウンドでTVやラジオでのBGM使用実績多数。 2008年、映画「人のセックスを笑うな」のサントラ盤をプロデュース、収録曲「Angel」は大ヒットを記録した。 現在は、Little Tempo、FISHMANSのメンバーとしての活動のほか、KODAMA&The Dub Station Band、OKI DUB AINU BAND、川上つよしと彼のムードメイカーズ、竹中直人&オレンジ気分のメンバーとして国内外での演奏活動を繰り広げている。




HAKASE-SUN「子午線ブリーズ 〜 Meridian Breeze 〜」

Digital | NGCA-1061_1 | 2021.08.18 Release | Released by NGMR




ARIWA & HAKASE-SUN「Ambitious Love」 Digital | NGCA-1061_2 | 2021.09.08 Release | Released by NGMR https://ssm.lnk.to/AmbitiousLove




HAKASE-SUN「Let It Shine ! Let It Shine !! Let It Shine !!!」 CD+Digital | NGCA-1061 | 2021.10.20 Release | 2,364Yen+Tax

Released by NGMR


01. Please Mr. Sunshine

02. bFGF

03. 子午線ブリーズ ~ Meridian Breeze ~

04. Ital Notes

05. Reggae Shangri-La

06. poco a poco (ここは何処?)

07. Darling Street Shuffle

08. Cyborg Jungle

09. Peace Y’all

10. こだま和文 with HAKASE-SUN / cafe à la dub

11. Ska Glorioso ~ ARARAGAMA SKA

12. Happy Zappy Day

13. ARIWA with HAKASE-SUN / Ambitious Love

14. Spanish Harlem

15. Lovey Dovey Stylee


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