AI音楽ライセンスの収益は演奏家にも届くか — AFMがメジャー2社との訴訟継続を主張
米国の音楽家組合American Federation of Musicians(AFM)は7月17日、Universal Music GroupとWarner Music GroupがSuno/UdioとのAIライセンス契約などから得た収益について、演奏家への支払い義務を争う訴訟を継続すべきだとニューヨーク連邦裁判所に主張した。グラミーが評価する「録音に関わった人々」の報酬が、生成AI時代にどう守られるか。GAJが論点を整理する。
争点は「新しい利用」に対する支払い
Music Business Worldwideの7月22日報道によると、AFMはSound Recording Labor Agreement(SRLA)の条項が、録音物の「すべての新しい利用」に対する独立した支払い義務を定めていると主張した。メジャー側は、AIライセンスに対応する既存料率が契約にないため支払い義務は生じないとの立場だ。 AFMはこれに対し、ビデオゲームへの音源利用が始まった際にも、最初から専用料率が整っていたわけではないと説明する。さらに、AI生成物がストリーミング、広告、ゲーム、サンプリングなど既存の利用形態へ流通するなら、すでに定められた料率を適用できる可能性があるとした。
著作権者だけでなく演奏家の取り分が焦点
SunoとUdioをめぐる議論では、学習データの許諾やレーベルの原盤権が注目されやすい。しかし今回の争点は、録音に参加したスタジオミュージシャンや演奏家へ、ライセンスや和解で生まれた価値をどう分配するかだ。AFMはUniversalとWarnerが組合員の録音をAI企業へ提供しながら、補償やクレジットを欠いたとして6月に提訴した。 一方、両社は訴えの却下と証拠開示の停止を求めている。裁判所は現時点で、却下手続きへ進むか、証拠開示を止めるかを判断していない。つまり結論はまだ出ておらず、今回のニュースはAFM側の反論が提出された段階である。
グラミーのクレジット文化ともつながる
グラミー賞はアーティストだけでなく、部門に応じてプロデューサー、エンジニア、ソングライター、演奏家など制作参加者をクレジットし、功績を記録する仕組みを持つ。AIライセンスでも、誰の演奏がモデルや生成物の価値を支えたかを追跡できなければ、評価と報酬の両方が権利者の上層だけで止まりかねない。 先週GAJが取り上げたAI音楽ラベルは「作品がどう作られたか」の透明性を扱った。今回のAFM訴訟は、その次にある「許諾収益を誰へ戻すか」という問題だ。表示、識別、利用記録、分配までを一本の設計として考える必要がある。
日本の音楽制作チームが今から残すべきもの
日本のアーティストや演奏家にとっても、AI条項は海外だけの問題ではない。原盤契約、実演家契約、セッション同意書に、機械学習への提供、生成物への利用、声や演奏スタイルの模倣、クレジット、監査、追加報酬をどう扱うかを明記する重要性が増す。 少なくとも、参加者名、担当楽器、録音日、ISRC、原盤所有者、許諾範囲を検証できる形で保存したい。AIとの共存を選ぶ場合でも、オプトイン、利用範囲、追跡可能性、支払い条件がそろって初めて、クリエイター中心の市場になる。GAJは制度変更だけでなく、制作現場へ利益が戻る仕組みも追い続ける。

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