top of page

J Dillaを語るdhrmaに見えるビートメイカーとしてのアイデンティティ

兵庫・加古川出身24歳のビートメイカー・dhrma。 今年1月に惜しくも亡くなってしまったMF DOOMの追悼をイメージして制作された曲や、J Dillaの誕生日にPhennel Kolianderと共にリリースしたトリビュート盤「Making From Dee’s Marking」等で国内外から注目を浴びている。更にはYoutube配信や京都のJazzy Sportで行われているビートライブ"TableBeats"のメインメンバーとしてライブや現場でも勢力的に活動をするdhrma。オーセンティックなスタイルながら斬新な展開やサウンドで構築されるそのビートは、関西を震源地にこれから度々リスナーやオーディエンスを揺らしていく事だろう。 本インタビューでは、dhrmaが語るプロセスやDillaなどに影響を受けた自身のビートメイカー観から見えるそのアイデンティティに近づいた。場所は、dhrmaとHIPHOPが出会った地である加古川のストリートショップ「Factory No.079」。その辺りも含めて、彼のヒストリー,キャリアのプロローグとして注目してほしい。

文・編集 kyotaro yamakawa

写真 ibuki nishiura

協力 Factory No.079

(兵庫県加古川市加古川町13 JR加古川駅南口出てすぐ)





"ビートメイカーでもTシャツになれるんやっていう事に衝撃を受けました"




・初めてHIPHOPと出会ったのはいつですか? 「初めてはまさしくここ(Factory No.079)です。それまでHIPHOPはやんわり気になってて。服がデカいとかラップとか。高校がこの近くにあって、この辺りが通学路だったんですね。なので学校終わって勇気を振り絞って入って行きました。そこでレコードとかターンテーブルに触れたのが始まりですね。」

・なるほど、確かにいきなり深そうなHIPHOPに触れれそうな場所ですよね。ビートメイカーの前にまずはラッパーとして活動されていたそうですが、何がきっかけでビートの制作を始めたんでしょうか? 「そうですね。最初はラップやってました。きっかけは色んな要素がありますね。ラップする時にビートが無いからとか。レコードのインストを探す事でもより良いビートを探すようになってて。 その時にFactoryにあったJ Dillaのコーナーに、Dillaがプリントされた服が置いてあったんですよ。シャツに写ってる人を最初はラッパーやと思ったんですけど、聞いてみたらビートメイカーやって言われて。それまでは裏方の人だと思ってた事もあって、ビートメイカーでもTシャツになれるんやっていう事に衝撃を受けました。そこから凄いビートに興味が出て楽器弾けなくてもサンプリングで作れるっていう事が分かったり先輩に教えてもらったりしながら少しずつ始めました。そういうきっかけが重なって気付いたらビート作ってましたね。」

・第一に影響を受けたのがJ Dillaだったんですね。身の周りで影響を受けた方などはいますか? 「それこそ京都のJazzy SportでやってるTableBeatsのメンバーには凄く刺激を貰ってますね。毎回新しいビートを持ち寄ってそれ鳴らしてかっけーって思ってます(笑)。」

・YouTubeやアルバムなどTableBeatsの活動を拝見させてもらいましたが、凄いかっこいい集団だと思いました。 トラックメイカーやプロデューサーとは違うビートメイカーの存在は、メディアやリスナーの間でも話題になりにくいのが惜しいですよね。 「まだ定義が出来上がって間も無いのもありますし、聴く人もLAとかに比べたら少ないですし、ここからまだまだやなって思いますね。」





・instrumentalのビートミュージックは、ラップミュージックとはまた違った面白さがあると思います。dhrmaくん自身は自分のビートのどの部分に自分らしさがあると思いますか? 「TableBeatsのメンバーによく言われる事があって。HIPHOPのビートって1ループの美学みたいなものがあるんですけど、"それを汲み取りつつ次の展開で裏切ってくる"みたいな事は言われます。 僕自身同じループを作ってても聴いてると飽きちゃうんですよ。だから、それをどう飽きさせないかって凄い考えてて。ビート作った上で急に声ネタ入ったりとかいきなり元ネタのループが入ってまたメインのビートに戻るとか。再生を押して1番初めに聴く新鮮さみたいな物を一曲単位で何回も戻していくっていうのは意識してます。」

・そこがdhrmaくんのアイデンティティだと。凄い深い話の様に感じました。 「結構みんな意識はすると思います。ビートメイカーって1ループだとライブの時にどうしても間延びしちゃうので。細かく曲を変えていくか一曲を作り込むか、飽きさせへんように繋いでいくっていう。」


・ビートメイカーからしたらboombapのビートのどの部分に美学があると思いますか? 「trapも含めDTMや作曲はコードから作ったりロジカルな物が軸だと思うんですけど、自分が聴いてきたboombapはサンプリング主体である分、大胆になれると思うんですよね。コード進行とかもぶっちゃけセオリー通りじゃなくてもかっこよければそれでオッケーっていうのがHIPHOPの良さだとも思うので。質感とかも綺麗すぎず汚い音でも使えたり。サンプリングの大胆なカッコ良さが投影されているのが僕の大好きなboombapであり、そこに美学があると思います。trapも聴くんですけどね。」

・trapも聴くって発言がありましたけど、boombapに固執してるわけではないんでしょうか? 「まったく無いです。最近やと四つ打ちとかも作ったりしてます。trapも全然やりたいですね。BPMが早いか遅いかってだけの違いなので。自分の軸をブラさずに色んな事が出来たら最高かなって思います。」

・dhrmaくんの軸とはどういう部分にあるんでしょう? 「スタイルですね。個人的に好きで作ってるのは、感情に訴えかけるような物じゃなくて無機質なビート。boombapで余り使わないような音も普段のビートに使ったりしてますしね。自分で取捨選択をした結果でtrapぐらいのBPMになったのなら全然やりたいです。」

・先ほどDillaの名前も出ましたが、現在のスタイルに行き当たるまでに影響された音楽はありますか? 「boombapなんですけど、ゴリゴリの90'sを研究して聴いてたってわけでもなくて。やっぱり自分が影響を受けたのは、2000年代のStones Throwのアーティストですね。それはずっと聴いてました。ひたすら構築した生音に加えてブリブリのシンセサイザーのベースっていうプラスアルファの要素に自分は凄いハマりました。ドープってこういう事なんだって思いましたね。」




 

INFOMATION


ウェルカムマンがお届けするポッドキャスト番組が満載。

グラミー賞に関連するアーティストを紹介する番組「ROAD TO GRAMMY」


Making From Dee’s Marking(Snippet) - BLACKVVATCH

(※Dilla Monthである2月限定での生産発売のため現在は購入不可)


・それこそ最近でいうと、Phennel KolianderさんとのユニットであるBLACKVVATCH名義でDillaの誕生日にトリビュート盤としてリリースされた「Making From Dee’s Marking」がとても印象的でしたが、あの作品はどういった制作背景があるのでしょうか? 「自分もPhennel Kolianderも勿論Dillaの事がめっちゃ好きで。普段からDillaのビートを、同じ元ネタで自分なりに解釈して作るっていう事を2人共ちょこちょこやってたんですよ。俺が京都に遊びに行った時にもセッションしたり一緒にビート作ったりする中で、『これは作れそうやな』と思ったので2人で制作した形になりました。お互いが持ってたDillaネタで作った曲と今回2人で新しく作った曲、あとお互いソロとして新しく作った曲も入ってます。」

・今までも話してた通りDillaのリスナーであり、影響を受けたプレイヤーであるdhrmaくんとしては念願のリリースじゃないですか? 「そうですね、ずっと出したくて毎年リリースしたいとは言ってました。クラシックじゃないけど、Dilla好きが聴いたら分かるようなネタも入れていくっていうテーマもある作品です。」

・Dillaから最も影響を受けた部分はどの部分ですか? 「…ミックスかもしれないですね。曲によって上ネタが小さかったり、逆に上ネタが大きくてドラムが小さい曲もあって。そういう色々が重なってDillaの曲になると思うんですけど、何を思ってそう作ったんやろうって気になります。しかも、そのバランスが1番かっこいいって思うぐらいの聴かせ方をしてくるのでめっちゃ参考にしてますね。例えばドラムの音を一個サンプリングする時点で凄いEQをいじってたりとか。そういうこだわりの部分は影響受けてると思います。」

・既存曲のカバーにはどういったスタンスで臨んだのでしょうか?印象的な作業があれば知りたいです。 「同じになるようにはしたくないなってまず思いました。なのでDillaのネタは使うんですけど、自分のいつも通りの感じで作っていきましたね。2人で作った曲は今ご時世的にも中々会えなかったので、データでキャッチボールしながら作っていきました。」



・3月にはSILENT KILLA JOINTさんとのダブルネームでアルバムが出るそうですね。ラッパーとの共作はどういう風に捉えてますか? 「そうですね、3月10日に出ます。僕はプロデューサーでは無いので、やっぱりセッションになってしまうんですね。なので、ラッパーの方の声を意味を持ってる楽器として僕は捉えて作ります。あと誰にでもビートを渡すわけでもなくて、SILENT KILLA JOINTは昔から仲が良く遊んだり時間を共有したりとあるんですが、ラッパーとしてビートへのグルーブの理解もしっかりあるラップをするので制作は二つ返事で決まりました。制作過程も楽しかったです。」

・個人的には、国内外のラッパーとのリリースもこれから期待してます。

最後の質問となりますが、dhrmaくんとしては今後の展望はありますか? 「今まで通りビートを沢山作っていくっていう以外に特には無い…かな。まぁ今やからこそなんですけど、早くクラブで爆音でビートを鳴らしたいですね。」







最新の音楽ビジネス&エンターテックのトピックスを解説する番組「MUSIC BUSINESS SESSIONS」


0件のコメント
bottom of page